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RNO--6984
 平成30年 4月 本科生講座
演題 【 認知症及び脳卒中の重症度の診断マーカー   】
  講師 千葉実年大学 学長
   五十嵐 一衛 先生
講演要旨
 私共の研究所では、脳梗塞を小さい無症候性(SBI,Silent Brain Infarction)no)のうちに見出し、適切なる処置をすることにより、高齢者のQOL(Quality of Life)を維持するという事業を展開している。これまでのデータだはSBIが見つかると健常者に比べ、脳卒中になる確率が10倍上昇すると報告されている。
 現在、脳梗塞のような高齢時の細胞障害は主として活性酸素に依ると考えられているが、私共が検討してみると、活性酸素より、細胞増殖因子ポリアミンの一種であるスペルミンより産生されるアクロレインの方が、活性酸素より数倍強い毒性を持つことが明らかとなった。そこでこのアクロレインがSBIのマーカーとなるかどうかを検討したところ、血漿中のPC-Acro(蛋白質結合アクロレイン)と、インターロイキン−6(IL-6)、C反応蛋白質(CRP)を測定すると、SBIを84%の感度と特異度で見つけることが出来た。すなわち、脳梗塞リスク値(0〜1で表記し、1に近づくにつれて脳梗塞になる確率が高くなる)の中央値は、健常者が0.14に対し、SBIを有する人は0.80であった。
 一方、認知症ではPC-Acroに加え、老人班を形成するアミロイドベーターの2種類の比を測定し、年齢を加味すると、認知症リスク値はアルツハイマー病(0.98)≧軽度認知症(0.97)>大脳白質病変を有する認知症予備軍(0.73)>健常者(0.14)となり、脳梗塞の無症候性脳梗塞に相当する認知症予備軍を高感度に見出すことに成功した。
 また、尿ではグルタチオンによるアクロレイン解毒の代謝産物である3−HPMA(3−ヒドロキシプロピルメルカプツール酸)量が、脳梗塞、認知症患者で減少することを見出した。すなわち、GSHによる解毒が低下すると、血漿中のPC-Acroが増加することが明らかになった。

将来の展望
 1 脳卒中のバイオマーカーの加え、近未来に認知症のバイオマーカーを実用化し、
   高齢者のQOL維持の貢献する
 2 血液バイオマーカーに加え、尿中バイオマーカーを実用化し、より簡便に
   脳卒中並びに認知症のリスク評価を行う
 3 副作用の少ないアクロレイン除去剤を脳卒中並びに認知症予防薬として開発し、
   高齢者社会を迎える日本の活性化に少しでも役立つことを目指している