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RNO--6311
 2017年 7月 聴講生講座
演題 【東山魁夷の生き方】
  講師    長野県信濃美術館・東山魁夷館館長
      橋 本 光 明 先生

講演要旨
 東山魁夷氏は、東山ブルー、祈りの画家、白い馬の画家など、親しみを込めて呼ばれている国民的画家です。魁夷の研ぎ澄まされた感性によって描かれた自然の風景は、優美さ、静寂さ、幻想的で情感豊かな作品として私たちの心を魅了します。千葉県と深い関係にあり、生涯の大半を市川市中山の自宅で過ごし、市川市名誉市民となる。市川市に、東山魁夷記念館があります。
 静かに優しく語りかける心象風景の世界は、魁夷自身の誠実で真面目な性格や美術に対する深い洞察と精神性、自然観などを普遍的に表現したものとしてりかいされています。この真摯な制作への姿勢や自然描写の中に、東山魁夷の内面や精神、さらには人生そのものが投影されていると言えます。
 人の気持ちを温かく受け入れ、柔らかく包むような絵は、激しさや荒々しさからは縁遠いものですが、魁夷の生き方を見ると、壮絶で波乱万丈の人生を歩んだことがわかります。相反する性格の両親の下で、胸に憂愁を抱き、絵や本の世界に逃れた幼少時代。両親のことを思いやり画家の道に迷い、自然の中で心を慰めた少年時代。父親の事業失敗による経済的窮迫の中で絵筆を取り、出展するも落選する青年時代。死を覚悟した出兵と終戦後の家族との死別を通して風景画家として道が開かれていきます。
 その転機となったのも千葉県でした。鹿野山に登って構図を考え、完成した作品「残照」が、第3回日展で特選に選ばれます。すでにこの時、40歳に手が届くところになっていました。その後は、日本芸術院賞受賞、皇居新宮殿の壁画や東宮御所壁画、文化勲章、日展理事長、唐招提寺壁画などを完成し、日本画の最高峰の一人となります。
 千葉県立美術館で「東山魁夷展」を開催した時は70歳でした。画風の固まった高齢に作品には、表現の魅力だけでも十分ですが、「私はずっと以前から生かされている」という人生観の下で鑑賞すると一層味わい深いものとなります。
 苦難の中で希望を失わず忍耐強く前進していく魁夷の生き方は、生きるための真の勇気を私達に示しています。
講演内容
・東山魁夷と千葉県との関係
・東山魁夷と長野県との関係
・東山魁夷の代表的壁画
・相反する二つの振幅の中で多様な価値観を受け入れ、心を磨く
・外的変化より内的変容による自己変革
・制作を通して精神的に深化(作品の象徴化)
・日本画の可能性を求めることが、生き方に繋がる