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RNO--2872
 2011年 11月 聴講生講座
演題    【 生物の本能 ー体内時計を中心にー 】
  講師            千葉実年大学校 学長  橘 正道 先生
 
講演要旨
 本能が基にあり、そこに教育・訓練が加わりヒトを含む高等生物の能力は育ってゆく。生まれつきのもの、本能の支配範囲がどこまでか分かりにくいことが多い。その曖昧さから、「天才の育て方」などという論議や夢が生まれてくる。 
 このような事を念頭に置きながら、植物から話を起こし、「生物の体内時計」、ついで「動物の方位決定」についての初期研究の足跡を辿り、ひたむきに生きている生物の姿を眺めてみたい。
 ナンキンマメ、ネムニキなどの植物の葉は夕方にしぼむ。“暗くなるからしぼむのだ”と多くの人は考えている。この葉の運動は古くから人の興味を引いていた。進化論で有名な科学者、ダーウィンは晩年に植物の運動の研究をしている。
 多くの植物は1年の決まった時期に花を咲かせる。生育の良否とは関わりが少ないように見える。遅く蒔いたコスモスは、小さくても初秋に花を咲かす。ホウレンソウは良く育っても秋には花を持たない、年を越してからトウが立つ。ポインセチアは何もしないと、クリスマスでも色がつかない。
 ビュウニングは植物には体内時計があるとの仮説を立てた(1936年)。植物のみでなく、他の人によるミツバチやトリの研究結果を考慮したものである。最初は無視されたが、第二次大戦後に徐々に認められるようになった。
 ミツバチについての古くからの観察は、餌場を訪れる時間が極めて正確なことであった。ドイツの生物学者、フリッシュはミツバチが仲間に餌場の方向と距離を教える行動《ミツバチの踊り》を発見した。太陽の位置を基準とする《太陽コンパス》と太陽の動きに応じてそれを補正する機能として、身体の中に時計を持っているらしいとした。 
 鳥の渡りは驚異的だが、体力に加え、その方位決定能力が体内時計に結びついてくる。クラーマーは籠の中の渡り鳥が、渡りの季節になると、一定の方向を向き、羽をバタバタさせるのを見て実験をしてホシムクドリが太陽コンパスを用い、体内時計を持つことを証明した。
 人間も体内時計を持っている。現在時計生物学という領域が生まれ、遺伝子、分子レベルの研究が進んでいる。