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RNO--1790
 2011年1月 本科生講座
演題【医薬品及び検査薬の開発〜高齢者の生活の質向上】
  講師          千葉大学名誉教授   五十嵐 一衛 先生
講演要旨
 日本の三大生活習慣病は言うまでもなく、がん、心臓病、脳卒中である。この中で病気の重症度の指標となる有効なバイオマーカーが存在しないのは脳卒中のみである。しかも、脳卒中になると運動能力や認知能力が低下し、入院生活を余儀なくされている方が非常に多い。私共はこの脳卒中のバイオマーカーの開発、更にはこのバイオマーカーの低下を指標とした脳機能改善薬の開発を目指し、現在種々研究を展開している。これに関し、これまでに見出したことについて簡単に紹介する。
 細胞が壊れる病気である心臓病や脳卒中はその原因として活性酸素が考えられている。しかし、私共がいろいろと検討したところ、活性酸素よりも、反応性の高い二重結合を持つアルデヒドであるアクロレインが、より細胞障害に関わっていることが明らかとなった。このことは日本における疫学調査で酒飲みは脳の病気になりにくいという結果と良く一致している。酒の強いヒトはアルコールからできるアセトアルデヒドという二日酔いの原因物質を分解するアルデヒドデヒドロゲナーゼという酵素を多く持ち、この酵素は同様なアルデヒドであるアクロレインも分解するからである。
 この事実に基づいて、まだ症状が現れていない小さな梗塞(無症候性脳梗塞)を見つけ、適切な処置をすることにより脳卒中になるのを防ぐバイオマーカーを探したところ、血中のアクロレインと一緒に生体防御反応のマーカーであるインターロイキン6とC反応性蛋白質を測定すると、無症候性脳梗塞が85パーセントの精度で見出すことができることが判明した。この発見は高齢者の生活の質の向上に役立つと確信している。
 また、脳卒中の薬は現在血液が固まるのを防ぐ薬が主流を占めている。私共はアクロレインを除去する化合物が脳梗塞の大きさを間違いなく小さくすることを動物実験で明らかにした。近い将来、アクウロレイン除去剤が脳機能改善薬として世の中で使用され、社会に役立つことを願ってこれからも研究を行っていく予定である。