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RNO--1109
 2010年4月 聴講生講座
演題  【 科学の心 − 正直、率直なもの 】
  講師         千葉大学名誉教授・千葉実年大学校学長
                            橘 正道 先生
講演要旨
 自然科学の研究では、現象と事物に対しての正直、率直さが必要である。
 しかし、これを保つのは用意ではない。科学者も人間、その心には多くの欲と、しがらみ、また執拗さが住みついている。これらの内面と人間関係が加わると誤りが生じ、争いまで生まれてくる。つまるところ人間の活動である。これらは日常生活にも通ずるところがある。例を挙げ、解析を試み、寄り道をしながら一緒に考えてみたい。
 「自然科学の研究で必要なのは、創造性とひらめきだ」とよく言われる。正直、率直はそれと対立するようにも聞こえる。時間が許せば、その議論もしたい。
課題1.《木が動くから風が吹くのか》 ある大学の入試問題、小論文の題
 「強い風の吹く日、子供がおじいさんの物理学者に言いました。“木が動く から風が吹くんだよね”と。おじいさんはそうだと思いました」この話につ いて自分が考えること自由に書きなさい、というのが課題だ。
  受験生の約90?は、子供の間違った考えに反応した理屈っぽい解説だっ た。子供の考え方に味方する反応を示した人は少なかった。
 課題の応用 − 日常的な次のような話をどう解釈するか?
 1)AさんとBさんは仲が悪い、どうしてか?
 2)サプリメントを飲む人は、寿命が短い、米国での報告、何を意味するの  か?
 この締めくくり、「あらゆる可能性を考え抜くこと」、利害、先入観を離れ て事実の直視とその解釈が大切であり、多数決で決めるべきものでもない。
  事実の解釈には、文章への翻訳も含まれてくる。解釈ー文章への翻訳は多 くの科学の基本である。言葉にしないと、考えを進めることができない。し かし、これが思うほど容易ではない。言葉にすると、言葉は独り歩きをる。
 それが怖い。
課題2.《ニュートンによる万有引力 − 重力の発見》多くの話題を持って     いる
 1.リンゴなど、発見物語、月は落ちない
 2.考えの透明さー正直さー率直に考えて行く事
   重りを振り回すと、遠心力。それと釣り合う力。
  木星、太陽よりの距離は地球の約5倍、重量は320倍、約12年で太陽 を一回り。太陽の重力は地球の(320割る25)倍。計算した遠心力と一 致する。
 3.改めてニュートンが《発見したというのは本当か?》
   今でも人間の感覚にはとても受け入れにくい万有引力を想定し、法則に  照らし計算し、天体の運行を説明しきった、ことが偉い。
課題3.《学説(理論)と真理》この二つの混乱はいつでも、どこでも起きて     いる。
 1)学説は文字通り説であって、真理そのものでない。真理にいたる過程と  してよい。
  「作業仮説」は「叩き台の学説」であり、それを基に次々と修正を加え、  真理に近づけようというものー事実と矛盾しなければ、正しいとし、矛盾  すれば修正を加えて改善をする。人間の能力の及ぶ範囲は極めて限られて  いるので、特に目に見えない世界を取り扱う科学、原子物理学、生化学な  どでは、重要な思考法だ。 
 2)学説の限界
  「日常的には、疑う余地のない、万有引力とその法則すら、全くの真理で  はなかった」アインシュタインの相対論の登場
   彼の若いときの思考実験ー自分で考えながら、その結果の余の非常識さ  に何年も悩んだという。「手に持つ鏡を見ている自分が、その方向に光の  速さで動いたとき、自分が映るだろうか」という問いに、馬鹿正直に取り  組んだ。その執念が、天才の基礎にある。
 3)学説と事実、または学説と真理の混乱。それによって起こした悲劇は多  い
  脚気病菌説と陸軍の混迷         略